顧客志向を越えて日本の人事をリードする
会社設立前夜
今から20年以上前の2001年10月に私たちは当時の住友信託銀行内の設立準備のプロジェクトとして産声をあげました。このプロジェクトは「ABC社設立プロジェクト」と呼称され、ABCは、その時点では何も決まっていないが、今後このプロジェクトに参加するであろう「A社、B社、C社が集まって創業する会社」という意味を込めて名付けられました。
その発想は「企業の人事は多くの煩雑なオペレーションに悩まされている」、「だけれども大企業の人事給与業務を一手に引き受けてくれる適当な会社は見当たらない」、「であれば自分たちでその会社を作ろうではないか」という、振り返ってみると先駆的ではあるものの、無謀ともいえるチャレンジ精神から生まれたものでした。
会社設立
結果的に、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)、松下電器産業(現パナソニック)、花王、他1社がこの挑戦に賛同し、創業時から株主として、またユーザーとして参加することになり、2002年5月にABC社から「人事サービス・コンサルティング」という名称で会社が設立されました。(後に、三菱商事も子会社である人事給与アウトソーシング会社であるヒューマンリンクと人事サービス・コンサルティングとの統合を通じて、現エイチアールワンに資本参加することとなります。)
設立以来のコンセプト
そのコンセプトは、大きく三つの方向性があり、一つは上述したように、「悩みが似たような人達が集まってみんなで解決する器作り」を通してわが国の発展に貢献することです。それは、設立当時に流行していた、一企業グループのシェアードサービスとして機能するのではなく、複数企業のためのシェアードサービスとして「器」を作り、多くの共通する人事業務・システムのスタンダードを構築するというものです。これは言い換えると、Private Goods(私有財)、Public Goods(公共財)とは違う、器としての Common Goods(共有財)を志向するということです。
二点目はこのCommon Goods(共有財)を管理する上で、ユーザーがこれを主導するということです。今日、人事管理・給与計算を行う上で情報システムが欠かせないことは言うまでもありませんが、私たちは基本的にこれらの情報システムについてシェア上位の市販の人事給与パッケージを利用しています。私たちはスタンダードを構築する上で、「ユーザー連合」としての声を、これら人事給与パッケージに反映させ、ベンダー主導からユーザー主導へと変えることで、共有財の価値を高めたいと考えています。
三点目は、人事部門の変革です。これは、当社が「コストセンターからプロフィットセンターへの転換」を通じて人事のビジネス化を図るということと、ユーザーにおける「オペレーションからの解放による人事部門の役割を再定義する」ということの二つの側面があります。前者は、会社設立前は当然コストセンターであった人事部門をアウトソーシング会社として収益化することの利益的貢献、収益企業としてのサービスレベルの向上、延いては社員の前向きなキャリアの形成を目指すことを考えました。後者は、オペレーションから解放された人事部門は何をするべきなのかという問いです。この20年以上前の問いは未だに多くの企業において問いのまま残されているかと思いますし、私たちもこの問いへの十分な解決策を提示できているわけではありません。一方で、昨今では、人的資本経営といった人事部門に対する改革の要請やHR Techあるいは人事データを用いたAI活用などの情報技術の向上など人事部門を取り巻く環境は一大転機にあると思われます。当初は、人事給与のオペレーションから始まった私たちも、何れこれらの環境変化に対応することで、20年来の問いの解決に貢献したいと考えています。
今後に向けて
このように、設立以来のコンセプト、つまり「顧客志向を越えて日本の人事をリードする」という目標は、現在も私たちの経営理念・行動指針の基礎になっています。一方で、今では、設立当初の株主だけではなく、多くの企業に私たちのサービスをご利用いただいておりますが、まだまだこれらコンセプトの実現には道半ばであることも認識しております。また、これらは私たちだけで達成できるわけではなく、多くのお客様と協同で作り上げていくものであるとも思います。これからも、お客様の声に耳を傾け、日本の人事に貢献する「器」を常に拡げ、磨き続けられる存在になりたいと私たちは考えています。